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●ミネラルの種類

 

必須ミネラルは大きく2つに分類され、ここでは便宜的に体内の量が多いものを多量ミネラル、少ないものを微量ミネラルと呼びます。

多量ミネラルは、体内のミネラルの 99%以上を占めています。

微量ミネラルは1日の必要量が100 mg以下と極めて少なく、中には1 mgに満たないものもありますが、人間にとって必要不可欠なため、それぞれ適切な量をバランス良く摂取することが大切です。

 

・多量ミネラル

 

ナトリウム

ナトリウムは食塩の成分でもあり、調味料や加工食品などに多く含まれます。人間の体内には成人で約100g存在し、骨や体内の水分中に存在しています。食塩の摂取過剰が問題にされがちですが、実は人間にとっては必要不可欠なミネラルです。 ナトリウムは多くの食品に含まれているため、不足の心配はありません。一方で、ナトリウムを過剰に摂取し続けると、体内に蓄積しやすくなりむくみや高血圧の原因となります。また、ナトリウムを摂りすぎると胃ガンや脳卒中の危険性も高まります。

 

カリウム

カリウムは、特に野菜、芋、果物などの植物性食品に多く含まれ、水に溶けやすい性質を持っています。 カリウムは人間の体内に約100~150gあり、そのほとんどが細胞中に存在しています。カリウムはナトリウムと深く関わり、体内のナトリウムを排泄しやすくする働きがあります。そのためカリウムは高血圧を予防する働きが期待できます。

 

カルシウム

カルシウムは、骨や歯を構成し、乳製品や小魚などに多く含まれます。人間の体に最も多く存在するミネラルで、体重の1~2%の比率を占めています。そのう ち99%が骨や歯に存在しており、残りの1%は血液などの体液や筋肉、細胞に分布し、体の様々な機能を調整しています。不足すると、骨粗しょう症やイライ ラの原因のひとつとなります。

 

マグネシウム

マグネシウムは、ナッツ類や魚介類、精製していない穀物に多く含まれます。カルシウムと密接な関わりがあり、骨や歯の形成に必要な栄養素です。また、体内 で約300種類以上もの酵素の働きを助ける役割を担い、エネルギー産生を助けるとともに、血液循環を正常に保つために働いています。不足すると、動脈硬化 や狭心症、心筋梗塞や筋肉の痙攣、神経過敏症などの症状が現れます。また、骨粗しょう症や糖尿病などの生活習慣病の危険性も高まります。

 

リン

リンは幅広く様々な食品に含まれ、加工食品をつくる時に食品添加物としても使用されています。カルシウムの次に人間の体内に多く存在するミネラルで、体重 の約1%にもなります。リンは吸収されやすいため、血液中の濃度にすぐに影響を及ぼします。しかし、体内のホルモンが過剰にならないように調整し、過剰な リンを尿中に排泄します。 通常リンが不足する心配はありません。しかし、リンを摂りすぎるとリンの濃度を調節するホルモンを分泌する器官に異常が起こることがあります。

 

・微量ミネラル

 

鉄はレバーや赤身の肉や魚、ヒジキや一部の野菜などに多く含まれます。人間の体内には約3~4gあり、そのうち約70%は血液に、約4%は筋肉に存在して おり、体が酸素を利用して生命活動を維持するために働くことから機能鉄と呼ばれています。残りは肝臓や骨髄で機能鉄の不足に備えて蓄えているため、貯蔵鉄 と呼ばれています。 鉄は吸収率が低い栄養素で、体内から排泄される量の何倍もの摂取が必要です。また、月経のある女性や妊婦の場合は特に不足しがちで、鉄が不足すると貧血になります。成長期の子どもや女性は積極的に摂取する必要があります。

 

銅は、甲殻類やイカ、タコ、レバーなどに多く含まれます。人間の体内には約80mg存在し、その約50%が骨や筋肉に、10%が肝臓に、そのほかは血液などに存在します。 銅が不足すると、貧血になるほか、骨がもろくなったり毛髪の色素が抜けたり、脂質や糖の代謝に異常が起きることがあります。一方で、銅はミネラルの中で毒 性が低く、過剰に摂った分は排泄されるため過剰摂取によって健康を害する心配はありません。しかし、遺伝的に銅が体内に蓄積するウィルソン病という病気が あり、重度の肝臓障害、腎不全、脳神経障害などが起こります。

 

亜鉛

亜鉛は魚介類や肉類など動物性食品に多く含まれます。人間の体内では血液や皮膚に多く、約2g存在しています。そのほか骨、腎臓、肝臓、脳、男性の場合前立腺に多く存在します。 亜鉛は体内での様々な代謝 (※2)に関わっているため、亜鉛が不足すると細胞やたんぱく質の合成がうまくいかず、子どもの場合は発育が遅れます。また、舌の表面にある味を感じ取る 細胞が生まれ変わる機能が落ちるため、味覚障害が起こります。皮膚炎や、免疫力の低下もみられます。

 

ヨウ素

ヨウ素は、海藻や魚介類に多く含まれます。海産物を多く摂取する習慣がある日本人の場合、ヨウ素が不足する心配はありませんが、世界的には不足しがちな栄 養素です。ヨウ素は人間の体内に約10~20 mgあり、そのほとんどがのどの辺りにある甲状腺に存在しています。甲状腺は、代謝の維持に必要な様々なホルモンを分泌する器官で、ヨウ素は甲状腺から分 泌されるホルモンの構成成分となり働いています。 ヨウ素の吸収率は高く、日本では不足による欠乏症が見られることはありませんが、ヨウ素が不足すると甲状腺が腫れる甲状腺肥大や、甲状腺腫が起こります。 成長期に不足した場合には、成長障害や脳の未発達などが見られます。ヨウ素を摂りすぎた場合にも、甲状腺ホルモンがうまくつくれなくなるため、ヨウ素が不 足した時と同じ症状が見られます。

 

セレン

セレンは、わかさぎやかつおなど魚介類に多く含まれます。活性酸素を打ち消す過程で働く酵素やたんぱく質を構成し、体内の抗酸化作用 (※3)において重要な役割を担っています。 セレンの吸収や働きは、はっきりとは明らかになっていませんがセレンが不足すると、克山病という病気が起こります。克山病は心筋症の一種で、うっ血性心不 全、心臓突然死、不整脈などの症状がみられます。小児や妊娠期の女性に多く、セレン剤を飲むことによって発生率・死亡率を激減させることが明らかとなって います。

 

クロム

クロムは様々な食品に微量ずつ含まれる、代謝に関わるミネラルです。血糖値、血圧、コレステロール値を下げる働きに関わり、特に血糖値を調節するインスリ ンというホルモンの働きを助けます。人間の体内には約2mg存在し、現在必須と考えられているミネラルの中では最も微量です。必要量も微量なため、通常ク ロムが不足することはありませんが、入院などでクロムが欠乏した場合には、糖の代謝異常、成長障害、脂質やたんぱく質の代謝異常、角膜の異常、動脈硬化、 脂質異常症などが起こります。

 

マンガン

マンガンは、穀類や野菜類、豆類に多く含まれ、人間の体内には約12~20 mg存在しています。マンガン自体は銀白色の金属ですが、空気中では酸化し、表面が黒くなります。体内では代謝に関わる酵素の構成成分となったり、酵素を 活性化する成分として様々な働きをしています。 マンガンは植物性食品に広く含まれているため、不足する心配はなく、過剰摂取によって健康を害する心配もありません。しかし、鉱山労働者に粉じんによる中毒症が起こったことが報告され、中毒症状としては肺炎や中枢神経の障害が起こります。

 

モリブデン

モリブデンは、豆類に多く含まれます。働きなどの詳細は明らかになっていませんが、肝臓に比較的多く存在し、酵素の構成成分として働いたり、尿酸の代謝に関わっています。 モリブデンの吸収率は高く、過剰な分は排泄されて体内の濃度が一定に保たれています。通常は、モリブデンの不足や摂取過剰によって健康に害を及ぼす心配は ありません。しかし、モリブデンが構成成分となっている酵素が遺伝的に欠損している場合、脳の委縮や痙攣、精神異常、目の水晶体異常などがみられます。

 

※1:日本人の食事摂取基準とは、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的に、エネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を示したものです。

※2:代謝とは、生体内で物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。

※3:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。

 

 

●基本情報

ミネラルは、人間にとって必要不可欠な五大栄養素のひとつであり、体の組織をつくる原料となり、体の働きを維持・調節する働きを持つ微量栄養素です。 人間の体の約96%は、炭素水素酸素窒素で構成される炭水化物やたんぱく質、脂質、ビタミンなどの有機物と水分からできています。そして残りの約4%を構成しているのがミネラルです。 しかし、人間は体内でミネラルをつくることはできないため、食品やサプリメントで摂取する必要があります。多すぎても少なすぎても健康の維持増進には良くないため、バランス良く摂取することが大切です。 ミネラルは、地球上に存在する118種類の元素のうち114種類が該当します。それらのミネラルの中で、人間の体内に存在し、不足すると健康に害を及ぼすなど栄養素として欠かせないことが明らかになっているものを必須ミネラルといい、現在13種類が必須ミネラルとされています。 ミネラル(mineral)という名前は、mine (鉱山・鉱石)や金属を意味するmetalという言葉に由来していると言われています。ミネラルは金属元素で、それぞれの名前は発見された場所の地名やギリシャ神話、その金属を含んだ物質の色など様々な由来から名付けられています。

ミネラルの一般的な効能

<豆知識>

必須ミネラル以外にも、体に必要なミネラルがある 日本人の食事摂取基準 (※1)では、必須ミネラルである13種類のミネラルが示されています。しかし、必須ミネラル以外にも体に必要だと明らかになっているミネラルが4種類あ ります。以下の4種類のミネラルが食事摂取基準に定められていない理由は、たんぱく質やビタミンなど他の栄養素に含まれているため、それらの基準を示すこ とでミネラルも同時に摂取できるからです。その他、スズやニッケル、金などの多くの元素が体内に含まれていますが、その必要性については未知のことが多く、現在研究が進められています。

 

硫黄

たんぱく質に含まれるミネラルです。皮膚、髪、爪の形成に働きます。また、糖質や脂質の代謝をサポートする役割もあります。

 

コバルト

赤血球の色素生成など造血に働きます。

 

フッ素

虫歯の予防などに効果があるとされていて、海外では摂取基準が示されることもありますが、日本では示されていません。

 

塩素

食塩から摂取できるため不足することはほとんどありません。塩素は胃酸の成分として消化の過程で働くなど、殺菌作用があります。

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